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第6回お遍路巡礼記録
~愛媛県東予 六ヶ寺巡礼 知恵と工夫でつないだ200km超 ~

夏のお遍路

Sanuki Classic Convert EV Club(SCCC)による夏のお遍路。

今回は、第60番札所 横峰寺から第65番札所 三角寺まで、

四国山間部を含む総工程200kmを超える巡礼ルートに挑戦しました。

しかも、季節は真夏。

強い日差しが照りつける中、険しい山道を含む遍路道を走るという、

決して容易ではない条件です。

その相棒となるのは、SCCCが製作したEVワーゲン「GENNAi」。

航続距離は約140km。

200kmを超える行程を前に、果たしてこの小さなEVワーゲンでどのように挑むのか。

限られた航続距離、山道、酷暑といういくつもの課題を前に、

SCCCが選んだのは、EVの特性を理解したうえでの知恵と工夫、

そして仲間との連携でした。

一見すると無謀とも思える挑戦。しかし、そこにはEVだからこそ生まれる新しい旅の

楽しみ方がありました。

航続距離140kmのGENNAiは、果たして200kmを超える夏のお遍路を

どのようにつないだのか――。

その答えは、この先の巡礼記録でご紹介します。

充電大作戦!

 今回の夏のお遍路で最大の課題となったのは、GENNAiの

限られた航続距離で、真夏の200kmを超える巡礼ルートにどのように挑む

かということでした。

 約140kmという走行距離で、山間部の札所を含む今回のルートを巡るには、

事前の準備と綿密な充電計画が欠かせません。特に第60番札所 横峰寺は、

四国八十八ヶ所の中でも有数の山岳霊場。麓から険しい山道を登り、境内

周辺の駐車場は海抜約801m。酷暑の中、この高低差のある霊場を含む遍路

をどのようにつないでいくのか。

 今回の挑戦は、まず「充電計画」から始まりました。SCCC本部のある

香川県から、今回の巡礼ルートに近い愛媛県川之江方面へGENNAiを移動。

目的地までは約40km手前となりますが、メンバーの勤務先でもある

川之江営業所へ車両を持ち込み、営業所の皆様のご協力をいただきながら

充電を行いました。

 営業所で利用できる充電設備は一般的な100Vコンセント。急速な充電

はできませんが、2日間という時間を活用し、じっくりとエネルギーを

蓄える作戦です。

 こうした準備を経て、遍路当日は満充電状態のGENNAiでスタートする

ことができました。

 当日は香川県内某所へメンバーが集合し、サポートカーとなるアウト

ランダーPHEVに乗り合わせて川之江営業所へ移動。そこからGENNAi

とともに愛媛県西条市方面へ向かい、次なる充電ポイントへ。

 利用したのは、大型ショッピングモールに設置された200V普通充電

設備(エネチェンジシステム)です。ここを今回の充電拠点として活用し、GENNAiの充電時間を利用して、アウトランダーで近隣の霊場巡りを行う

計画としました。充電時間をどのように使うか、限られた航続距離をど

う補うか。

 準備段階から知恵と工夫を重ね、いよいよ真夏のお遍路本番へ向かいます。

準備編など_edited.jpg
横峰寺

第六十番 石鈇山 横峰寺

EVワーゲン GENNAi君は充電拠点でしばし休憩。

その間、私たちはサポートカーのアウトランダーに乗り換え、今回最初の

目的地となる第60番札所 横峰寺へ向かいました。

横峰寺への参拝方法はいくつかあります。麓から遍路道を歩く昔ながらの

方法、シーズン中に運行されるバスを利用する方法、そして有料道路を

利用して山頂近くまで車で向かう方法です。

今回は限られた時間を有効に使うため、車で参拝することにしました。

とはいえ、決して楽な道ではありません。山腹を縫うように続く細く曲がり

くねった坂道を慎重に進み、標高を一気に上げていきます。途中には

「本当にこの先にお寺があるのだろうか」と思うような区間もあり、

運転には十分な注意が必要です。

横峰寺は、四国八十八ヶ所の中でも有数の山岳霊場として知られています。

現在は道路が整備され、車で参拝できるようになりましたが、かつて

遍路道しかなかった時代には、多くのお遍路さんが険しい山道を何時間

もかけて登り、この霊場を目指しました。信仰の道として長い歴史を刻ん

できたことを思うと、車で訪れる私たちも自然と身が引き締まります。

通行料は2,000円ですが、この道路は一部が私道であり、通行料は道路の

維持管理や安全確保のために充てられています。急勾配や急カーブが続く
​約7㎞の山道を安心して通行できるよう日々管理されていることを思えば、

山岳霊場へ安全に参拝するために欠かせない大切な費用なのだと感じま

した。

駐車場に到着すると、標高は海抜800mを超えていました。

そこから参道を少し歩いて下ると、海抜約750mに建つ横峰寺へ到着します。

真夏の7月中旬。平地では猛暑日となる暑さでしたが、標高の高い横峰寺で

は季節が少し遅れているようで、駐車場周辺ではアジサイがちょうど見頃を

迎えていました。

涼しい山の空気と色鮮やかなアジサイに迎えられ、酷暑の中とは思えない

心地よいひとときを過ごすことができました。

読経を終え、本堂と大師堂で参拝を済ませた後、納経をいただいただいてい

ると、ちょっと印象に残る出来事がありました。

私たちの前で納経をお願いしていた参拝者の方が、一冊の立派な納経帳を

納経所へ差し出し、「本堂に忘れられていました」と一言。

納経帳は、お遍路さんにとって巡礼の証であり、思い出の詰まった大切

な一冊です。

ここまで苦労して登ってきた横峰寺で、その納経帳を忘れてしまった持ち主

は、気付いた瞬間、さぞかし驚き、落胆されたことでしょう。

納経所で大切に預かっていただけるとのことでしたので、きっと持ち主の

もとへ無事に戻るはずです。

旅先では思いがけない出来事に出会うことがありますが、これもまた、

お遍路ならではの心温まる一場面として印象に残りました。

第六十一番 栴檀山 香園寺

横峰寺を後にして向かったのは、第61番札所 香園寺。

香園寺は、四国八十八ヶ所の中でもひときわ特徴的なお寺です。

境内に入ると、まず目を引くのは鉄筋コンクリート造りの大聖堂。本堂と大師堂が一体となった近代的な建物は、お寺というよりも

大きなホールのような印象を受けます。

しかし、一歩堂内へ入ると雰囲気は一変。黄金に輝く御本尊を

中心とした荘厳な空間が広がり、静寂の中で心静かに読経を行う

ことができました。

香園寺は「子安大師」として古くから親しまれ、子授けや安産

祈願のお寺として全国から多くの参拝者が訪れます。

この日も境内は多くの参拝者で賑わっており、ご夫婦や家族連れ

の姿も多く見受けられました。地域の方々から篤く信仰されて

いることが伝わってきます。

横峰寺では、本堂に立派な納経帳が忘れられているという出来

事に遭遇しました。

その後、香園寺で納経をお願いした際、「忘れ物で困っている方

はいませんでしたか?」と尋ねてみると、そのような問い合わ

せはまだないとのことでした。

持ち主の方が無事に気付き、手元へ戻っていることを願うばか

りです。

すると住職が笑いながら、こんなお話を聞かせてくださいました。

以前、団体で参拝された際に、納経帳を取り違えて持ち帰って

しまったことがあり、後になって大騒ぎになったことがあった

そうです。

納経帳は、お遍路を続ける人にとって巡礼の証そのもの。

一冊一冊に積み重ねた思い出が詰まっているだけに、忘れたり

取り違えたりすると大変なことになります。

私たちも納経帳をバッグにしまいながら、

「これは気を付けないといけませんね」

と改めて話し合い、次の札所へと向かいました。

香園寺
宝寿寺

第六十二番 天養山 宝寿寺

GENNAiは充電拠点で、まだまだ電気を補給中。

その間、私たちはサポートカーのアウトランダーに乗り換え、

第62番札所 宝寿寺へ向かいました。エアコンの効いた車内は

快適そのもの。外は猛暑日でしたが、充電時間を有効に活用し

ながら近隣の霊場を巡る計画は順調に進んでいきます。

宝寿寺は、聖武天皇の勅願により創建されたと伝えられる古刹

で、本尊は十一面観世音菩薩。厄除けや開運の御利益があると

され、地域の方々からも篤い信仰を集めています。境内は比較的

コンパクトですが、落ち着いた雰囲気があり、ゆっくりと参拝

できるお寺です。

この日は猛暑日。

境内へ足を踏み入れると、まず目に飛び込んできたのは色とり

どりの風鈴でした。風が吹くたびに「チリン、チリン」と涼や

かな音色が境内に響き渡り、厳しい暑さを忘れさせてくれます。

夏ならではの風情が感じられる、とても心地よい空間でした。

よく見ると、この風鈴は大師堂内に設置された自動販売機で

授与されていました。お寺で自動販売機を利用して授与品を

受けるというのは珍しく、思わず足を止めて見入ってしま

いました。

さらに境内にはウォーターミストも設置されており、細かな

霧が火照った身体を優しく冷やしてくれます。

これは猛暑の中を巡礼するお遍路さんへの「お接待」の

心なのかもしれません。暑さ対策への心配りが感じられ、

ほっと一息つくことができました。

読経と納経を終え、風鈴の音色に耳を傾けながら境内を散策。

GENNAiはまだ充電器につながれ、一生懸命"電気をお腹

いっぱい"にしている頃でしょう。

こちらも心と身体をしっかり充電し、次の札所へと向かい

ました。

第六十三番 密教山 吉祥寺

GENNAiは充電拠点で、まだまだ電気を補給中。

その間、私たちはサポートカーのアウトランダーで、第63番札所

吉祥寺へ向かいました。

吉祥寺は、四国八十八ヶ所の中でも毘沙門天信仰で知られる札所

です。落ち着いた境内には穏やかな空気が流れ、歴史ある堂宇が

静かに迎えてくれます。

※四国八十八ヶ所巡礼と御本尊

四国八十八ヶ所巡礼では、各札所ごとに本堂の御本尊が異なります。

巡礼では、本堂で御本尊へ読経を行い、その御本尊の御真言を

お唱えした後、大師堂で弘法大師へ感謝と道中の無事を祈願する

のが基本です。

吉祥寺の御本尊は毘沙門天。

七福神の一柱としても広く親しまれ、厄除け、開運、勝運、財福

などの御利益があるとされています。

御真言は、

「オン ベイシラマンダヤ ソワカ」

読経とともに御真言をお唱えし、今回のお遍路の無事を

祈願しました。

その後、大師堂でもお勤めを済ませ、納経をいただきます。

帰宅後に吉祥寺について調べてみると、願いを込めて挑戦する

「成就石」という名物があることを知りました。

参拝した時にはその存在を知らず、残念ながら挑戦することは

できませんでしたが、お遍路は何度巡っても新しい発見があります。

「次に訪れた時には、ぜひ挑戦してみよう。」

そんな楽しみが一つ増えた参拝となりました。

参拝を終えた後、スマートフォンでGENNAiの充電状況を確認する

と、バッテリーは予定どおり満充電になっていました。

これで「充電大作戦」も順調そのもの。

GENNAiは迎えに来てもらう準備が整ったようです。

一方、時計はまもなくお昼。

GENNAiはお腹いっぱいになりましたが、こちらのお腹はそろそろ

充電切れ寸前です。

「もうひと頑張り。」

そう声を掛け合いながら、私たちは次の札所へと向かいました。

吉祥寺
前神寺

第六十四番 石鈇山 前神寺

第63番札所 吉祥寺を後にし、次に向かうのは第64番札所 前神寺

です。

このあたりは札所同士の距離が近く、効率よく巡れる区間。

そして今回は、この後に充電中のGENNAi君を大型ショッピング

モールへ迎えに行く予定です。そこで、GENNAiのお迎えに向か

う途中にある前神寺を先に参拝することにしました。

限られた時間の中で、移動の流れを考えながら札所を巡る。

これも今回の「夏のお遍路大作戦」の大切な作戦のひとつです。

前神寺は、石鎚山の麓に位置し、古くから石鎚山信仰と深く

関わってきたお寺です。

境内に入ると、山あいの霊場らしい静かな空気に包まれ、

本堂や大師堂からは長い歴史を感じることができます。

参拝を進め、大師堂へ向かった時、心温まる光景に出会いました。

そこには、おそらく近所にお住まいと思われる初老のご婦人が、

ラップに包んだおにぎりを二つ、丁寧にお供えされている姿が

ありました。

豪華なお供え物ではありません。しかし、その小さなおにぎり

には、お大師様への日々の感謝や親しみの気持ちが込められて

いるように感じました。

その姿を見ながら、ふとこんなことを思ってしまいました。

「この酷暑の中では、お大師様もアイス最中でも欲しいなぁ……

なんて思っているかもしれないな」

もちろん勝手な想像ですが(笑)連日の猛暑の中、汗をかきな

がら巡礼している私たちだからこそ、そんな気持ちも少し分

かるような気がします。

小さなお供え物から感じた温かさと、思わず笑顔になるひとコマ。

これもまた、お遍路ならではの出会いでした。

さて、参拝を終える頃には、こちらもすっかりエネルギー切れ。

GENNAi君は充電中ですが、どうやら人間側の充電も必要なよう

ですので次はランチスポット探し。

お腹を満たした後、満充電となったGENNAiを迎えに向かいます。

第六十五番 由霊山 三角寺

吉祥寺を後にし、第64番札所 前神寺で参拝を済ませる頃には、

お腹もすっかり空っぽになっていました。

そこで、まずは昼食へ。

しっかり食事をとり、人間もしっかりエネルギー補給です。

そして次に向かったのは、GENNAi君が充電中の大型ショッピング

モール。到着すると、そこには満充電となったGENNAiが待っ

ていました。

これでGENNAiも、私たちも充電完了です。

いよいよ今回の夏のお遍路の締めくくりとなる、第65番札所

三角寺へ向かいます。ここから再び主役はGENNAi君。

先導役は、今回の旅で何度も助けてもらったサポートカーの

アウトランダーです。アウトランダーのナビを頼りに、GENNAi君

がその後ろを追いかける隊列で出発しました。

ところが……。

ナビが案内した先に現れたのは、昔ながらの遍路道に沿うような

細く曲がりくねった山道。道幅は決して広くなく、対向車が来

ないことを祈りながら慎重に進みます。

「本当にこの道で合っているのだろうか……」

そう思うほどの険しい道のりでした。航続距離だけではなく、

道路幅にも気を遣う。これもクラシックカーで巡る旅ならでは

の苦労であり、同時に楽しみでもあります。

後で確認したところ、もう少し広く走りやすいうえに、距離も

短いルートがあったようです。しかし、それもまた旅の思い出。

ナビ任せで山道を楽しんだということにしておきましょう。

そして無事に到着した三角寺。

ここは四国八十八ヶ所霊場の中でも、伊予国最後となる札所です。

山あいに佇む境内は静かな空気に包まれ、これまで訪れた札所と

はまた違った趣を感じさせてくれました。

本堂の御本尊は、十一面観世音菩薩。

御真言

「オン マカ キャロニキャ ソワカ」

をお唱えし、今回の夏のお遍路が無事に巡拝できたことへの

感謝を込めて、読経しました。

こうして、第60番札所 横峰寺から第65番札所 三角寺まで。

今回予定していた六ヶ寺の巡礼を、無事に結願することができ

ました。そして、もうひとつの挑戦だった「充電大作戦」も

大成功。

充電拠点を設定し、GENNAiが充電している時間を有効活用することで、航続距離約140kmのクラシックEVでも、真夏のお遍路を楽しみながら走り切ることができました。

あとは香川へ帰るだけです。

しかし、最後までGENNAiらしい出来事が待っていました。帰路を

走るうちに、バッテリー残量が少しずつ心細くなってきます。

そこで途中のコンビニエンスストアへ立ち寄り、SCCCお得意の

「エキストラバッテリー交換」を実施。

慣れた作業だけに交換は短時間で完了し、再び安心して走り始め

ることができました。

その後は大きなトラブルもなく、無事に香川へ帰着。

今回の「夏のお遍路大作戦」は、こうして幕を閉じました。

 

夏のお遍路大作戦を終えて

今回の巡礼で改めて感じたのは、計画すること、そして工夫する

ことの大切さでした。

航続距離約140kmのGENNAi君で、総行程200kmを超える真夏の

お遍路。数字だけを見ると、簡単な挑戦ではありません。

しかし、事前充電、充電拠点の設定、サポートカーとの連携。

そして、充電時間を有効活用するための巡礼計画。

少し知恵を絞ることで、十分に実現できることを今回の旅で

実感しました。もちろん、充電している時間にアウトランダー

で近隣の札所を巡るという方法は、単に「楽をするため」では

ありません。

限られた時間と航続距離を最大限に活用するための、

SCCCらしい工夫です。

そのおかげで、GENNAi君は十分に充電でき、私たちも予定して

いたすべての札所を無事に巡拝することができました。

そして何より、この厳しい暑さの中でも故障することなく

最後まで走り切ってくれたGENNAi君。

50年以上前に生まれたクラシックカーが、電気の力を得て四国

の霊場を巡る。

古い車と新しい技術が融合することで生まれる、新しい楽しみ方。

それこそが、SCCCらしいお遍路なのかもしれません。

今回の旅も、たくさんの思い出と新しい発見を残してくれました。

さて、次はいよいよどの札所を目指しましょうか。

SCCCのお遍路巡礼は、まだまだ続きます。

三角寺

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